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姐御からもらったSS

公開してみます、とりゃー





レスクール川沿い上空

空から見るダイアロスの地上
赤い波が黒い波に追われ散っている。
「おうおう、BSQどもが情けない有様だねぇ」
「まったくだ、最近BSQは腰抜けしかそろってねぇ」
空から見ても気持ち悪いのだから正面から見据えれば
逃げたくもなるだろうが…
部下の嘲りを聞き流しつつ、戦況を見据える。
「そうはいってもいまや友軍だ、助けてやらなければ」
「まったくだ…妙な因果だが…な」

BSQ vs ELGの構図に突如として現れた
黒き混沌の集団
十数年地上に確認され、鳴りを潜めていた
イーゴの悪夢

圧倒的数とその暴力はBSQとELGの争いに
半ば強制的に終止符を打たせた。

「無駄口はその辺にしておけ、突撃準備だ」
私は兜の面頬を下ろし、宣言する。
「了解姐さん」
それぞれが戦闘準備に入る。
ランスを構え愛騎に降下の合図を送る。
「目標敵先頭集団大型二足歩行兵器!
  BSQに戦争のやり方を思い出させてやれ!」



レスクール川沿い  地上

俺たちは押されまくっていた。
騎兵の命はその突進力だが…
明らかに深追いしすぎていた。
経験豊かな古参騎士が少なかったこともあるが。
一度崩された戦線は再構築できず、混乱の極みにあった。
「くそ…このままじゃ…」
焦りは募るがどうにもならない。
そんなときだった。
天空より矢のように降ってくる青い集団が見えたのは。
「やっときやがった。遅いぞELGのニワトリ野郎どもが。」

先頭のフライヤーが化け物に踊りかかる。
重力を味方につけ衝突寸前に手にしたランスを
化け物の頭につきつける。

ランスは狙い違わず目を貫く。
地上すれすれで羽を広げ衝突を防ぎ
また空に上がっていく。

「ドラゴンフォールか…ELGのニワトリ共、腕利きつっこんできやがった」
援軍と勇壮な攻撃を見た友軍に再度士気が戻ってくる。
負けていられない。
「騎兵集合!ELGの野郎共ばかりにいいかっこさせるな!」
俺は声を張り上げ周りに騎士に声をかける。
馬を返してきた20人ばかりが俺の周りに集まる
「チャージ!」
化け物どもの意識は明らかに上空のフライヤーに集中している。
隙だらけの胴体にランスをぶちこむ
核を失い崩れ落ちるその姿を見ることなく別の敵に標的を定め
突撃する。


数度の突進を終え再度上空で編隊を組みなおす
「何騎殺られた?」
「戦死1負傷後退4」
被害報告を聞いて考える。
下は再び隊列を組みなおしたBSQが黒の流れを切り裂いている。
おそらくもうほうって置いてもBSQが勝つだろう。
「私の隊は降りて戦う。ほかは飛び回って敵を撹乱しろ!」
「了解」
滑空しつつ降りる場所を探す。
目の端に孤立する一隊がみえた。
この戦線にいるBSQ兵は若いのが多い。
古参はミーリム側で戦っているせいもあるのだろうが。
周りが見えてない騎士が多い
「あそこで孤立してるやつらを救うぞ」
右手に持つ槍で目標を指し部下に指示を出す。
私の隊は、みなが3年以上の戦歴を持つ
ベテランだ…そんななか私はもう10年近い
戦歴がある。
そう、この戦乱の時代に入る前のダイアロスを知っている
あのなつかしい時代を…



戦闘自体は押しているようだが、俺はまた我を失ってしまった。
いつの間にか本隊から孤立し、包囲されていた。
「こりゃまずいなぁ…」
仲間たちと円形陣を組みながら、敵と相対する。
包囲を突破するのは難しそうだ。

「覚悟を決めるしかないか…」
そう呟いた時、またも青い集団が俺たちを救ってくれた。
上空から猛烈な風で包囲を散らしながら竜騎兵が降りてくる。
「この隙に本隊に合流しろ!」
「ここはまかせなルーキー」
竜から降り戦闘体制に入るELG部隊
「ばかいってんじゃねぇ!そういわれてほいほいさがれるか!」
「そうだ、なめんじゃねぇぞELG野郎」
俺と数人が馬を走らせELG部隊の側による
するといままで黙っていた隊長であろう人間が初めてしゃべった
「なら馬から下りなさいな。混戦を馬では動き回れない邪魔なだけよ」

面頬をあげた顔は女性の顔だった。短く肩口で切った銀髪や
右目を覆った眼帯も目立つが、近くで見れば一番目立つのは
プレートの耳の部分
彼女はコグニートだった。

華奢なその体のどこにそんな力があるのかわからないが
ハルバードを構え走っていく

そんな後姿に見とれて、出遅れてしまった。
「まってくれ!」
馬の蔵にかけてあったロングソードを抜きあわてて追いかける。

追いついたときには、すでに数体のスカルパスと戦闘状態に
あった。
「加勢するぞ!」
不用意に近づいてばっさりやられたくないので
声を出しつつ後ろから走る
「この程度の敵に加勢は無用よ」

そういうと、無造作にスカルパスの間合いに入り込む
勢いを利用してまず一体
敵の攻撃を回避しつつ、体を回転させる勢いで
ハルバードをなぎ払い二体まとめて倒す
空振りし体勢を崩しているスカルパスを
上段から振りかぶり破砕…計4体

あっというまにスカルパスを駆逐する。
「す…すげぇ…」

周りを見回せば、俺たちが苦戦し囲まれていた戦場が
あっという間に、駆逐されていた。

「加勢はいらないっていったでしょ?ルーキー君」

我にかえると真横にコグニートの女性が立っていた
近くで見ると、先ほどの戦いぶりが嘘のようにしかみえない

だけど、確かにこの人はオーラを放っていた。
先輩の騎士にもこんな雰囲気を放つ人はそうは多くない。

「すごいな…貴方も貴方の部隊も」
元敵であるのに、すなおに賞賛するしかなかった。
「そうでもない。貴方の先輩達もこれくらい余裕でこなすわよ」
確かに、俺の上官たちはこの人たち相手に互角に戦ってたわけで
まったく…世界は広い。

ELG部隊の戦いを見渡していると目線の端で瓦礫が動くのが見えた。

「ん…?」
よくみるとそれは瓦礫じゃない。あのデカイ二足歩行の化け物だ
光る弾を連射する武器を構えこっちを狙っている。

「あぶねぇ!」
とっさに盾を構え体を割り込ませる。
ガガン!
一撃で盾がひしゃげ、体が中を舞う。
「ぐぅ…!」
意識が飛びかけるが体中を走る激痛がそれを防ぐ
背中に衝撃、岩に当たりようやくとまる。

「ち、死にぞこないが…」
コグニートの指揮官はハルバードを構え対峙する。

ぎりぎりの間合いで、弾を避け走り寄る
弾が切れたのか殴りかかる化け物
それを真っ向からハルバードを振り上げ受ける

無謀だ…

でも結果は違ったハルバードを支点に飛び上がり
敵の胴に突きを決める。

やはり衝撃に耐えられなかったのか折れて突き刺さったままに
なるハルバード

ステップを踏んで間合いを取る指揮官

俺の傍で体勢を整える
「動ける?」
「すまん…無理だ…」
情けないことに体がまったく言う事を聞かない
「そう…じゃ時間を稼ぐしかないわね」

そのとき改めて俺はこのコグニート女性に恐怖し…
綺麗だとおもった。

絶体絶命の今、不敵に口はしに笑みを浮かべるこの人に…
惚れてしまったといってもいいかもしれない。

「…いいから、逃げてくれ…俺なんかほおって」
この人を死なせちゃいけない。
自分なんかのせいでこの人を死なせたら…
死んでも死に切れない。
「馬鹿じゃないの?そんな押し付けがましい自己犠牲ご免だわ!」

そうどなりいい捨てると、挑発するように敵に向かうあの人
なんで突然…
クールな印象がああも変わったんだろう。
戦場じゃこれくらいの光景は日常茶飯事なはずなのに

弾の再装填が終わったのか銃口をこちらに向ける敵
そのときだった。

「死に損ないはさっさと消えやがれ!」

こちらの窮地に気付いたELG兵が数人あつまり寄ってたかって
核の部分に攻撃を決める。
完全にあの指揮官に意識が行っていた敵はこれにまったく反応できなかったらしい

崩れ落ち今度こそ完全に動きを止める。

「姉さん大丈夫ですかい?」
止めをさし指揮官の下に集まるELG部隊
よくみると俺の仲間たちの姿も見える。

「ええ…平気よ。それよりだれかあの子を治してやって」

遠目にあの人の姿を見ながらELG兵の治療を受ける
「なんであの人は俺のことを見捨てて逃げなかったんだろう」
心の中の疑問がつい口に出る

俺を治療してくれていたELG兵がその疑問に答えてくれた
「あの人はね、生きてる誰かを見捨てるってことができないの」
独り言のように続けるELG兵
「そのおかげで、10年も戦ってるのに、命令違反や不服従やらでまだ隊長なんかやってるの」
10年…俺がまだ洟垂れのガキだったころから…戦争やってるのか

「昔、なんかあったらしいよ。詳しくはしらないけど」

そういうとELG兵は俺の治療を終えた


傷も治り、周囲の掃討戦も終わったようで、ELG・BSQ両陣営はそれぞれわかれ
野営の準備に入るようだ

あの人も自分の竜を呼び撤収準備に入っている。
助けてもらった礼を言うのを忘れていたことに気がついて
あわてて近寄る

「なぁ、まだ礼をいってなかった。助けてくれありがとう」
竜に乗りかけたあの人はそのままの姿勢で答える
「こちらも、あの化け物の一撃を防いでもらったから。おあいこよ」

「そういえば、名前を聞いてなかった。私の名前はフュリー」
「俺は、ロッドだ」
竜に跨り、翼を羽ばたかせる。
「ロ…ッド…?」
「ええ…俺の名前がなにか?」

「いえなんでもないわ…ロッド、生きてまた会えればいいわね。」
微笑みながら、彼女は言葉をつなぐ
「もっとも、戦場では私に会わないほうが幸せなんだけど」
「なんでだ…?」

目も口元も確かに、笑みを浮かべながらどこか寂しそうな笑顔

「私たちはね、火消し部隊なの。最激戦区危険地帯へ投入され戦うのが使命だから」
「そうなのか…」

「それじゃ、さよなら」

そういうとフュリーさんは竜を飛翔させる
「絶対死なないでくれ!また貴方と会いたいんだ!」
飛び去る彼女に大声で叫ぶ
聞こえたのか、聞こえないのか分からない。
だけど…またあの人に会いたい

それまでは絶対に死ねない。その為には強くならなくては…
そう心に誓った。



「あのルーキー、姐さんに惚れちまったようですなぁ」
意地悪い顔をしながら副官が、近寄ってくる
「馬鹿なこというな、だまって飛べ」
もう、私が誰かに惚れるなんて事は無い
「へへ、BSQの新米騎士とELGのベテラン鬼騎士の禁断の愛!」

「いいじゃないですか…姐さん?」

「お前落下耐性100あるか?あっても死ぬと思うけど…」

「ちょ…ま…冗談ですって冗談」

部下を半分本気で脅しながら、心の中では別のことを考える

私の歴史はあそこで、止まっているのだ。

あの日、この戦乱の時代がはじまった。
きっかけとなったときに…

この空と一緒だ…
あの時と変わらない…

「明日もいい天気?そこからみえる?」


後編

レスクール川での勝利を機にBSQとELGは戦力的な面での
合流をすることができた。
そのままガルムへ入りガルム討伐戦
アルビーズへ抜けアルビーズにある次元の歪みを包囲し
断たれていたヌブールと連絡線を確保した。

俺はこの一連の戦いで、ある程度の戦功をたてる事ができた。
アルビーズでは森の中ということもありあまり騎兵の出番は無かったが
馬を降り、戦いかなりの数を倒すことができた。

常に冷静に、周りを見て…
当たり前だが、なかなかできないこのことを常に念頭に置くことができたから。
頭の中には常にあのELG精鋭部隊の動きと…フュリーさんの姿が
焼きついていた。


残る歪みはイプス…イルミナ様の城があったところだ。
遠めに見たことがあるが…とても風光明媚な場所だったとは思えない。

死の雰囲気と荒涼な空気だけが漂う…虚無の空間だ。

現在の戦況をまとめると…こうだ
ミーリムでは現在も防戦が続いている。
ガルム側からも突入を試みたが、戦線を構築する前に
円形包囲され失敗し、機会をうかがっている。

イプスにイーゴがいるとは限らないが最大の拠点とみて間違いないとみている。

作戦を終了し、城への帰途につく。
戦いが一段楽した喜びに沸く部隊内
そんな雰囲気に一人どこか溶け込めずにいた。
あの戦い以降今日までフュリーさんの姿を見ていない。
激戦区にしか姿を現さない…そういっていたけど。
森の中のアルビーズはともかくガルムにも姿は見せなかった。
「おい、いとしの我が家が見えてきたぜ」
橋を越え、城門が見え始める。
「帰ったら、少し休んで今度はミーリムだな」
「やっと先輩たちと一緒に戦えるぜ」
安心感から口数が多くなる。
だが城門が近づくにつれ
なにか雰囲気がおかしいことに気付く。

どこか元気の無い門守備兵。
空気全体が焦げ臭い。

その答えは…中に入って一目でわかった。
元噴水があった中央広場には怪我人とそれを介護する人で
うまっていた。

状況を把握するために動き出すもの
疲れも忘れて怪我人救助のために走り出す衛生兵

そして俺のように呆然とするもの…

「どけ!邪魔だ!」
担架に載せられ運ばれる負傷兵…
よく見ればそれはわが軍の赤い装備ではない
海のように青い装備…ELG兵だ。

部隊章を見るとそれはELG竜騎兵部隊のものだった。
「おい!この人はどこから運ばれてきた!?」
「中央アルター近くの広場だ!まだまだ来るぞ。手伝え!」

俺はすべてを聞く前にアルター前に走って行った。
走りながら怪我人を確認する…
あの人が…フュリーさんがいない事を祈りながら。

中央アルター前の道はすでに運ばれる怪我人で一杯だった。
空からはふらふらと降りてくる竜騎兵
地上は着地する場所を作るべく、傷つき倒れた竜を無理やり運び
空間を作る作業と無傷なもの怪我人と…そしてすでに死んでいるもの
を選ぶ作業…

「おいしっかりしろ!死ぬんじゃないぞ!」
「おいはやくこっちにきてくれ、仲間が死に掛けてるんだ」

俺には怪我人を助ける手段は無い。降りる場所を作る作業
を手伝う。
また一匹傷ついた竜が降りてくる。
広げる羽は切れ切れになって体のあちこちからも流血が見える。

何より、その竜には見覚えがあった。
「フュリーさん!」

辛うじて竜は二本の足で立ち、体を支えることに成功する。
フュリーさんの鞍には二人の怪我人が乗っていた。
「だれかこいつらを頼む!」
竜から降り怪我人に肩を貸し歩く。
「ついたぞ…おい気をしっかり持て」
「すいやせん姐さん…」

駆け寄って、すぐに一人を受け取る。
「あぁ、君か…悪いな。かまってやってる暇は無い。すぐに戻らなくちゃ」
一人を寝かせて、フュリーさんは立ち上がる。
「戻るって…どこへ?」
「戦場に決まっている!まだ生き残りがいるかもしれないんだ」

そういうと、自分の竜の下へいってしまう
「おい、ルーキー…」
寝ているELG兵が俺を呼ぶ
「姐さんを…落ち着かせてくれ。俺たちは殿なんだ…もう…生きてる奴はいない」
苦しそうな呼気とともに言葉を吐き出す。
「頼んだぞ…俺のことはほおって置け…この傷じゃ姐さんには悪いが助からん」

それだけ言うとELG兵は力尽きた…
両手を胸元で組み、瞼を閉じさせ、数秒黙祷する。
「すいません…いきます」
by IvoryColor | 2006-07-21 12:20 | MoEその他
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